適応行動論試験2001年前期
 長谷川眞理子
<注>60分 持ち込み不可

1.生物進化について、次の文章のうちで正しいものはどれか?
1)生物は進化すると進歩する 2)進化はより複雑な生物を生みだす 3)進化とは集団中の遺伝子頻度が変化することである 4)進化によって集団の適応度は上昇する

2.自然淘汰について、次の文章のうちで正しいものはどれか?
1)自然淘汰とは、適応を生み出す、これまでに知られている唯一のプロセスである 2)自然淘汰は弱肉強食のことである 3)自然淘汰によって生存・繁殖上不利な形質が広まることもある 4)自然淘汰はめったに働かない

3.自然淘汰について、次の文章のうちで誤っているものはどれか?
1)自然淘汰が働くと、集団内の個体は適応度が高くなる 2)自然淘汰はつねに個体の形質を変化させていく 3)自然淘汰によって、集団全体の適応度を高める形質が広まるとは限らない 4)自然淘汰の速度は、その生物の世代時間と形質にかかる淘汰圧とに依存する

4.ある巻き貝の個体群に左巻きと右巻きがあり、最初の個体数は、それぞれ60個と40個であった。左巻きはそのうちの30個体が産卵し、合計59個の稚貝が生き残った。右巻き個体は40個全部が産卵し、合計72個の稚貝が生き残った。右巻きの相対適応度は以下のどれにもっとも近いか?
1)1.0 2)1.2 3)1.4 4)1.6

5.遺伝子淘汰と群淘汰の考えについて、次の文章のうちで正しいものはどれか?
1)個体の適応度が低くなっても、集団全体の適応度が上がるような形質が進化する
2)一つの個体の中に存在する同じゲノム上の遺伝子間の利益は一致している
3)大型で脳の大きい動物ほど、群淘汰が働く可能性が高い
4)群淘汰が働かないことはないが、そのための条件が成立している生物は多くはない

6.ヒトのからだの基本的な設計が完成したのは、以下の化石人類のうちのどれか?
1)アウストラロピテクス 2)ホモ・ハビリス 3)ホモ・エレクトス

7.類人猿とヒトの共通祖先が分岐した年代は、以下のうちのどれにもっとも近いか?
1)700万年前 2)400万年前 3)1200万年前 4)3500万年前

8.ヒトの脳の大型化について、次の文章のうちで正しいものはどれか?
1)脳の大型化はヒトに固有のプロセスであり、それはヒトが言語を持つから生じた
2)脳の大型化は霊長類に広く見られる現象であり、それは、おもに社会関係の複雑さに対応することが淘汰圧であった
3)脳の大型化はアロメトリーの副産物であり、ヒトの脳の大きさは、他の哺乳類とともに、体重とのアロメトリー直線の上にのる
4)脳の大型化は、生息地の複雑化と道具製作の多様化に対応して起こってきた

9.兄弟姉妹はすべて両親を同じくするものとすると、自分といとこの子との血縁度は次のうちのどれか?
1)0.5 2)0.25 3)0.125 4)0.0625

10.血縁者間の利他行動の進化を説明する法則を提出した学者はだれか?
1)E.O.ウィルソン 2)ロバート・トリヴァース 3)チャールズ・ダーウィン 4)W.D.ハミルトン

11.その法則によれば、血縁者間の利他行動が進化する条件は次のうちのどれか?
1)C/B>r 2)C/B<r 3)C/B<1 4)B/C<1/r
<注>選択肢4)は削除するよう、試験中に指示がありました。

12.血縁者間の進化的利害の葛藤を表す現象でないものは、以下のうちのどれか?
1)継子いじめ 2)離乳期の子どもの退行現象 3)妊娠性糖尿病 4)兄弟げんか

13.血縁淘汰が働くために必要な条件は、次のうちのどれか?
1)表現型マッチング 2)発達した新皮質 3)大きな集団を作ること 4)親による子の世話

14.非血縁者間の利他行動が進化する要因として適切でないものは、つぎのうちのどれか?
1)将来もつきあう確率が高い 2)個体識別能力がある 3)得られる利益と支払うコストが等しい 4)記憶力が高い

15.配偶者獲得をめぐる競争が、どちらの性の個体間において強いかに大きく影響する要因は、以下のうちのどれか?
1)どちらの性の個体の方が体重が大きいか 2)出生性比 3)どちらの性の個体が子の世話をするか 4)どちらの性の個体の方が成長が速いか

16.記述問題
性分化のプロセスを考えると、ホモセクシュアリティが存在することに不思議はないことを簡単に説明せよ。しかし、それが集団中に大きく広がることはないことも説明せよ。
<注>解答の長さは答案用紙の半分くらいまでに抑えるよう、試験中に指示がありました。