2001熱力学試験問題

熱学　試験問題（小牧）　２００１年９月３日１０：５０－１２：２０（９０分間）

計算用紙１枚、解答用紙（両面）１枚

１．ガス冷房装置の原理を考える。この装置は外界との仕事の授受はなく、１サイクルの間に、ガスの燃焼による温度Ｔ₁の高熱源からＱ₁（>0）の熱を供給され、温度Ｔ₂の部屋からＱ₂（>0）の熱を取り去り、気温Ｔ₀（Ｔ₁>Ｔ₀>Ｔ₂）の外気に余った熱－Ｑ₀(>0)を捨て、元に戻る。
(a)Ｑ₀をＱ₁，Ｑ₂で表せ。
(b)この装置が可逆であるための条件を記せ。以下の問ではこの条件は満たされているとする。
(c)この装置をカルノー・サイクルの組合わせで実現するとして、その模式図を書き、熱と仕事の流れを記入せよ。
(d)この装置の「効率」Ｑ₂/Ｑ₁をＴ₁，Ｔ₂，Ｔ₀で表せ。
(e)可逆な電気冷房装置で同じ冷房能力を実現したとすると、１サイクルの間にどれだけの電力が必要か、Ｑ₂，Ｔ₂，Ｔ₀で表せ。

２．状態方程式　ｐＶ＝ｎＲＴ　（ｐ：圧力、Ｖ：体積、Ｔ：温度、ｎ：モル数、Ｒ：気体定数）に従う気体について、以下の問いに答えよ。
(a)この気体では、内部エネルギーＵ　が温度Ｔ　のみの関数であることを示せ。
(b）定圧比熱と定積比熱について、Ｃ_p－Ｃ_V　＝ｎＲ　を示せ。
(c)この気体ｎ　モルを体積Ｖ　からＶ’　まで等温過程（温度Ｔ　）で膨張させる間に気体が受け取る熱Ｑ　を求めよ。
(d)この気体ｎ　モルを体積Ｖ　からＶ’　まで断熱自由膨張させたとき、気体のエントロピー増加⊿Ｓ　を求めよ。

３．張力Ｙ　の下で長さがｘ　であるようなゴムひもの熱力学を考える。ゴムひもの受ける仕事はd'Ｗ＝Ｙdx　で与えられる。以下では常に張力が働く状態にあるとする。
(a)このゴムひもの内部エネルギーの変化dＵ　を、Ｕ　の自然な独立変数の変化で書き表せ。
(b)自由エネルギーの変化dＦ　を書き、それからマクスウェル関係式（∂Ｓ/∂ｘ)_T＝－（∂Ｙ/∂Ｔ)_xを導け。
(c)状態方程式Ｙ＝Ｔｇ(x）が成立するとき、内部エネルギーが温度だけの関数となることを示せ。
(d)状態方程式Ｙ＝Ｔｇ(x）が成立するとき、このひもを断熱状態で引き伸ばす（断熱伸張）と、温度が上昇すること（(∂Ｔ/∂ｘ)_Ｓ>0）を示せ。ただし、比熱が常に正であることは、証明なしに用いてよい。
＊ふとめの輪ゴムを引き伸ばす前後に唇に触れてみて温度変化を確かめてみよ。

４．次の問に答えよ。
(a)熱力学の第２法則には、いくつかの表現がある。その内、２つを記せ。
(b)熱力学的温度（目盛り）とは何か。
(c)氷が水に浮くことと、氷の上でスケートが良く滑ることとの間には関連がある。クライペロン=クラウジウスの式を用いて上の２つの事実の間の関係を説明せよ。